ケーキ屋の開業|個人事業主がやるべき税金と届出の完全ガイド

閉店後の厨房で帳簿をつける菓子職人 お菓子語り

お菓子屋を始める——それは長年の夢の、晴れやかなスタートです。でも、開店準備でつい後回しになりがちなのが「お金の手続き」。会社(法人)にするか、個人事業主にするかで迷う方も多いと思います。

私自身、複数の税理士さんに相談しました。出た答えは「利益(課税所得)が800万円を超えてこないと、法人化してもあまり意味がない」。裏を返せば、それまでは個人事業主のほうが税務上は有利なことが多い、ということ。800万円を超えてきたら法人化(法人成り)も検討するライン——そんなイメージです。(※業種や家族構成、社会保険の入り方で変わるので、必ず税理士さんにご相談を)

簿記の知識ゼロから始めて、確定申告を25年以上。その経験から「個人事業主になったら、これだけはやっておきたい」ことを、順番にお話しします。

まず「開業届」と「青色申告承認申請書」をセットで出す

事業を始めたら1ヶ月以内に、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。国税庁のHPからダウンロードでき、控えにコピーを取っておくと屋号の口座開設など他の手続きで役立ちます。

そして開業届とセットで出してほしいのが「所得税の青色申告承認申請書」。開業から2ヶ月以内(1/1〜1/15開業なら3/15まで)が期限です。白色申告は今はメリットがほぼないので青色一択。ここを出し忘れると、次の65万円控除が受けられません。あわせて社会保険から国民年金・国民健康保険への切り替えも速やかに。保険料は全額が控除対象になります。

複式簿記+e-Taxで「65万円控除」を取りにいく

複式簿記で帳簿をつけ、e-Tax(+電子帳簿保存)で申告すると、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。会計ソフトで月数回入力する習慣をつければ大丈夫。全く知識のない方は、地元の「青色申告会」や商工会議所の会員になることをお勧めします。ソフトの設定から確定申告まで、手厚くサポートしてもらえます。少し遠回りに感じるかもしれませんが、数年かけて申告のこと(税金も含めて)を学んでいきましょう。年会費は変わることがあるので、各団体にお問い合わせください。なお、クラウド会計ソフトの中にはe-Tax非対応で65万円控除の対象外になるものもあるので、青色申告会が奨励するソフト(弥生の青色申告など)を選ぶと安心です。

ひとつ強くおすすめしたいのが、「簿記3級」を取ること。数字の意味がわかると税理士さんや税務署の話もスッと入り、何より自分のお店のお金の流れが見える=自分を守る武器になります。できれば「FP3級」もあると、年金・保険・税金の全体像がつかめてさらに心強いです。

将来の備え①:国民年金は「長生きリスク」の生命線

個人事業主には厚生年金がありません。だからこそ、国民年金は“長生きリスク”に備える生命線です。未納にせず、きちんと納めておきましょう。さらにおすすめなのが「付加年金」。月400円を上乗せして納めるだけで将来の年金額が増え、受け取り始めて2年で元が取れる、とてもお得な制度です。

将来の備え②:小規模企業共済より、まずは「NISA」

退職金代わりの制度として「小規模企業共済」があり、掛金が全額所得控除(月最大7万円・年84万円)という強い節税メリットがあります。ただ、今はNISAという制度があります。共済は事業をやめるまで引き出しにくい“資金拘束”があるのに対し、NISAはいつでも引き出せて運用益が非課税。だからまずは使い勝手のいいNISAを優先。共済は資金に余裕が出てきてから、で十分です。ただし、NISAは“投資”です。リスクとリターンをきちんと学ぶことが大切で、生半可な知識では始めてほしくありません。それでも、これからのインフレを考えると、避けては通れないと考えています。

減価償却を味方につける

開業直後はオーブンやショーケースなど設備投資が大きい時期。減価償却費が税負担を抑えてくれます。建物以外の機械類は5〜8年で償却が終わるので、必要な機械を数年に分散して買うと長期的に節税効果が続きます。売上を増やすだけでなく「控除額」を意識すること。所得税額は市県民税や国保にもはね返るので、トータルで考えましょう。

余裕が出たら「ふるさと納税」も

経営が落ち着いてきたら、6月頃に届く市県民税の決定通知書を見て、ふるさと納税の上限額を試算してみましょう。実質2,000円の自己負担で本来払う税金の一部を返礼品に換えられます。手続きも年々簡単になっています。

消費税は「インボイス」を前提に考える時代に

ここは昔と大きく変わったところです。以前は課税売上1,000万円以下なら消費税は免税でした。でも今はインボイス制度があります。取引先(カフェへの卸やイベント請求など相手が事業者の場合)からインボイス発行を求められ、登録すると1年目から消費税の納税が発生します。

ただし当面は負担軽減の経過措置があります。基準期間(2年前)の課税売上が1,000万円以下なら、納める消費税を売上分の「2割」にできる“2割特例”が使えます(2026年分=令和8年分まで)。その後の2027・2028年分は「3割特例」に変わります。また課税売上5,000万円以下なら「簡易課税」も選べ、お菓子屋さんでは有利なことも多いです(会計期間前日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出、開業初年度は当該期間中でOK)。2割特例と簡易課税は有利なほうを選べます。

※インボイス登録の要否含め、お店の取引先で最適解が変わります。必ず税理士さん・税務署にご相談を。

まとめ:払うものは払い、守れるものは守る

簿記ゼロから始めて確定申告を25年以上。思うのは「脱税」ではなく「合法的なルールをしっかり知って使う」ことの大切さです。「払うものはきちんと払い、守れるものはしっかり守る」——この姿勢こそが、長く商売を続ける土台になります。これから開業するあなたの力になれたら嬉しいです。


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静岡県富士宮市青木で60年以上続く、地元に愛される和洋菓子の老舗です。

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営業時間:火〜日 8:00〜19:30(月曜定休)/住所:静岡県富士宮市青木325-12

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