「衛生管理計画書、作らなきゃいけないのはわかってるんです。でも、書類仕事が苦手で…」
前作「なぜ小さなお店にもHACCPが必要?」を公開したあと、いちばん多かったのがこの声でした。
正直に告白します。私自身、書類仕事が大の苦手です。うちの店にも「衛生管理計画書」というファイルは何年も前からありますが、中身は手引書をほぼ丸写ししたもので、実態とだいぶズレていました。「地下室で保管してます」も書いてなければ、「手袋の使い方」もふれていない。紙で作ると、更新が面倒で放置されるのです。
そこで今回、AIの手を借りて、実家の菓子屋の衛生管理書類を作り直しました。この記事は、その全工程の実演記録です。使ったAIは何か、どこでAIに任せて、どこで人間が判断したか、途中で何につまずいたか。同じことをすれば、あなたのお店の書類も1〜2時間で作れます。
さらに、私が実際に運用しているテンプレートも記事末尾で無料配布します。「AIはちょっと苦手…」という方は、テンプレをそのまま印刷して手書きで使うこともできます。AIを使う人にも使わない人にも、明日から動ける形でお届けします。
筆者について
私は地元の食品衛生協会で指導員として研鑽を積んでおり、菓子屋を50年以上続ける家業を営みながら、地域の事業者さんの衛生管理相談を受けています。
前回のHACCP基礎編、食品表示のマルシェ副業ガイドに続く「守りの実務」シリーズ第3弾。今回は実際の書類作成の全プロセスを、なるべく脚色せずに公開します。
記録は”紙のノート”じゃなくていい
まず、いちばん誤解されているところから。
「記録=紙に手書き」と思い込んでいる方が多いです。でも厚生労働省・菓子製造業向け手引書には、こう書かれています。
記録の作成・保管方法については特に指定はなく、電子媒体でも紙媒体でもよい
つまり、スマホの表計算アプリで記録してもOKなんです。保健所の立入検査でも、スマホ画面をお見せするか、必要なら印刷して渡せば足ります。
紙のノートは、書き忘れると取り返しがつきません。慌てて後日まとめて書けば、「これ本当に見て書いた?」と保健所に見抜かれます(実話)。スマホで毎日1分、その場で入力するほうが、はるかに続きます。
続かない仕組みで頑張るより、続く仕組みに変えたほうが賢い。「ペーパーレスの3点セット」でHACCPを回すというのが、この記事全体のゴールです。
今回使ったAI ― Claude Code
先に、使った道具を紹介します。Claude Code(クロードコード)というAIです。
- 提供元: Anthropic(アンソロピック)社
- 特徴: パソコンのターミナル画面で動く、対話型のAIエージェント。文章作成、複数の文書やファイルの整理を一緒に進めるのが得意
- 料金: 私は有料プランを使いましたが、無料で試せる範囲もあります
「ターミナル?」となった方、大丈夫です。同じAnthropic社の Claude.ai は無料アカウントで使え、ブラウザで開くだけ。この記事のプロンプトはすべてClaude.aiでも同じように動きます。ChatGPTやGoogle Geminiなど他社の生成AIでも、大筋は再現できます。
以下、私が実際にClaude Codeにどう指示したか、そしてAIの返してきた下書きをどう直したかを、順番に見ていきます。
AIで衛生管理計画書を作る
手順1:手引書をAIに読ませる
まず、厚労省確認済みの菓子製造業向け手引書PDFをAIに渡し、こう指示しました。
このPDFは厚生労働省が確認した菓子製造業向けのHACCP手引書です。
様式の構成と、私の店に応じて埋めるべき箇所を洗い出してください。
勝手な様式は作らず、必ずこの手引書に沿ってください。
ここが最初の重要ポイント。AIは何も指示しないと、それらしい「創作様式」を作ってきます。それでは保健所に通用しません。「必ず公的な手引書に沿って」と縛るのが大事です。
数秒で、AIは手引書の様式(Ⅰ.分類区分、Ⅱ-1.設備衛生管理、Ⅱ-2.原材料、Ⅱ-3.製造、Ⅱ-4.販売、Ⅱ-5.記録、Ⅱ-6.振り返り)を整理し、各項目で私に確認したいこと一覧を作ってくれました。
手順2:お店の実情を対話で伝える
そこからAIとの対話が始まります。AIから来た質問はこんな感じでした。
- 食品衛生責任者の登録名は?
- 冷蔵庫・冷凍庫の台数と管理温度は?
- 陳列ケースは何台?設定温度は?
- 従業員は何名?家族経営?
- 器具の洗浄手順と使っている消毒剤は?
- 卵は殻付き?液卵?仕入先で殺菌済み?
- 水は水道水?井戸水?貯水槽?
一問一問答えていくと、AIが下書きに順次反映していきます。この対話が「1〜2時間」の中身です。1回でうまくいかなくても、修正を伝えれば直してくれます。
手順3:ここが本題 ― AIの下書きを”現場の目”で直す
AIは真面目です。手引書に書いてあることを、そのまま整えた下書きを出してきます。でも、手引書に書いてあるとおりにやろうとすると、守れないルールが並ぶのです。
実例を3つ紹介します。
実例A:卵の保管温度
AIの下書き:
殻付き卵は10℃以下で冷蔵保管する
正論ですが、うちの設備では物理的に無理でした。冷蔵庫は既に材料でパンパン、卵を全部入れる余裕はない。書けないルールを書いたら、書類が嘘になります。
そこでAIに追加指示:
うちは殻付き卵を10℃以下で保管するのは物理的に難しい。
実態は「空調の効いた作業場で他の食材と距離を保って保管、購入後1週間以内に消費」。
これで書き換えてほしい。ただし、加熱工程が必ず入る(75℃1分以上)ことも明記して
書き直された文はこうなりました。
殻付き卵は仕入先で次亜塩素酸洗浄・殺菌済みのものを使用し、空調の効いた室内で他の食材と距離を保って保管、購入後1週間以内に消費する(先入れ先出し)。卵を単体で使用する製品はすべて75℃1分間以上の加熱工程を経て使用する。
「守れないルール」より、「守れているルール+加熱でリスクを抑える根拠」。実態と論理が両方通った書き方に変わりました。
実例B:使い捨て手袋の使い方
手引書には、手袋の使い方は詳しく書かれていません。でも指導員として現場を見ていると、「手袋をしていれば清潔」と勘違いしているお店が本当に多い。
長時間つけっぱなしの手袋の中は、素手より雑菌が繁殖しやすい環境です。手袋を使うなら「1作業ごとに交換」「外したら即手洗い」がセットで初めて意味を持ちます。この視点を、AIに追記させました。
使い捨て手袋の使用:衛生管理の基本は手洗いとし、手袋は必要な場合のみ使い捨てのものを使用する。手袋は1作業ごとに交換する。手袋を外したあとは直ちに手洗いを行う(手袋内は雑菌が繁殖しやすいため)。
手引書の丸写しでは絶対に出てこない項目が、対話で入りました。
実例C:普段の食事のルール
もう一つ、私が指導員として最近悩ましく思っているのが、ノロウイルスの不顕性感染です。感染していても症状が出ないまま、菌を撒く場合があります。毎朝の健康チェックだけでは防ぎきれません。
だから従業員の日常の食事にも、こう決めています。
- 2枚貝(カキ等)の生食は控える(特に流行期の10月〜3月)
- 生肉・加熱不十分な肉料理(ユッケ、鶏刺し等)は食べない
- 同居家族に嘔吐・下痢等の症状が出た場合は、出勤前に責任者に報告する
「うちはこう決めてる」を、対話でAIに伝えて追記させる。独自項目こそ、そのお店の衛生管理の骨格になります。
まとめ:AIは”手引書に精通した優秀な部下”
3つの実例に共通するのは、AIは手引書のプロだが、あなたの店の現場は知らないという当たり前の事実です。AIに全部任せると「教科書どおりだけど守れない書類」ができます。AIが下書き、現場を知る人間が仕上げる。この分業ができれば、書類は現場の相棒になります。
AIで日次記録表を作る
計画書の次は、毎日つける記録表です。手引書の別紙3にも記録様式が載っていますが、大きな月次シート・手書き前提で、正直続けにくい。うちも過去に何度か挫折しました。
そこでAIにこう頼みました。
手引書の別紙3の記録項目を保ったまま、スマホで毎日1分で入力できる
Excel/スプレッドシートを作ってほしい。1日1行、朝は温度、夜はプルダウンで○×、
基準を超えた温度は自動で赤くなる仕掛けで
AIは、条件付き書式・データの入力規則(プルダウン)・日付関数まで組み込んだファイルを作ってくれました。この生成物を、Googleドライブにアップロード→スプレッドシートで開くだけで、そのままスマホから運用開始できます。
(うちのカフェ部門も同時に作りましたが、菓子製造だけのお店なら、記事末尾で配布するテンプレでOKです)
月次振り返りもAIと
月末、記録表の1ヶ月分をコピーして、AIに投げます。プロンプトはたった数行。
これは菓子製造業の1ヶ月分のHACCP衛生管理記録です。
①温度の異常や気になる傾向、②×が付いた項目とその対応の妥当性、
③来月に向けた改善提案、の3点で簡潔に要約してください。
判断に迷う点は「保健所・食品衛生協会に相談」と書いてください。
数秒で、こんな返答が返ってきます(架空の例)。
① 冷蔵庫3の温度が月後半で徐々に上昇傾向。パッキンの劣化かドアの開閉頻度が原因の可能性。
② ×は2日発生。1日目は換気扇の汚れ発見→即清掃、対応は妥当。2日目は原材料の破損→返品、対応も妥当。
③ 冷蔵庫3のパッキンを次回点検時に確認することを推奨。
これが月末3分の振り返りです。気づいた改善点は、計画書に反映して改正日を追記していきます。書類が”生きた”文書になる瞬間です。
ペーパーレス3点セットの運用の型
ここまでで揃った3点はこれ。
- 衛生管理計画書(MarkdownやWord。指導員チェック後にPDF化して保管)
- 日次記録表(Googleスプレッドシート、スマホ入力)
- 月次振り返り(AI要約 or 手書き用紙)
運用は驚くほど単純です。
- 毎日1分:スマホで温度6つ入力、夜にプルダウンで○×
- 月初1分:スプレッドシートの黄色いセル(年・月)を書き換える → 日付・曜日は自動更新
- 月末3分:記録表をAIに貼って要約させる
- 年1回:計画書の見直し、実態と乖離した箇所を書き換え
これで保健所立入検査で「記録を見せてください」と言われても、スマホを差し出すだけ。紙で運用していた時代の、あの慌ててノートを探すストレスから解放されます。
AIに絶対任せてはいけないこと
念のため、はっきり書いておきます。この4つはAIに任せてはいけません。
- 温度の実測:温度計を見るのは人間の仕事。AIには温度が測れません
- 異常があった時の廃棄判断:責任者が経過時間と食材の状態を見て決めます
- アレルギー表示の最終確認:命に関わります。AIは補助、確認は人間
- 保健所・食品衛生協会への相談:AIは指導員や衛生監視員の代わりにはなりません
AIは”下書き係”と”振り返り係”に徹させるのが正解。実測と最終判断は、必ず人間が握る。この線引きだけは絶対に譲らないでください。
もう一つ大事なこと。完成した計画書は、必ずお住まいの地域の食品衛生協会または保健所にご相談ください。指導員仲間から言わせてもらうと、こういう相談は歓迎してくれます。「AIで下書きしたので見てほしい」と正直に伝えれば、実務的なアドバイスがもらえます。
そのまま使えるテンプレート配布【本記事の目玉】
ここまで読んでくださった方に、私が実際に使っているものをそのままお渡しします。AIが苦手でも大丈夫。以下のいずれかの方法で、すぐに使えます。
使い方A:AIと対話しながら自店化する(1〜2時間)
上のセクションのプロンプトを、Claude.ai やChatGPTなどに投げて、対話で自店の書類を作る方法。この記事のとおりに進めるだけで、あなたのお店の3点セットが完成します。
使い方B:テンプレをそのままコピペして書き換える(30分)
AIを使わなくてもOK。下のテンプレをそのままコピーし、【 】でくくった部分を自店の情報に書き換えるだけです。
- 衛生管理計画書テンプレ:記事末尾に全文掲載。折りたたみからコピーできます
- 日次記録表テンプレ:下のボタンからワンクリックで、あなたのGoogleドライブに独立コピーが作られます
使い方C:印刷して手書きで使う(PDFをそのまま印刷)
「PCもAIも苦手」という方には、この方法をお勧めします。印刷するだけで使えるPDFを3点用意しました。
- 衛生管理計画書テンプレPDF(A4・6ページ):印刷して、黄色マーカーの【 】部分に手書きで自店の情報を書き込めば完成 → ダウンロード
- 日次記録表PDF(A4横・1枚):毎月1枚印刷して、作業場に貼るかバインダーへ。朝は温度、夜は○×を手書き → ダウンロード
- 月次振り返り用紙PDF(A4・1枚):月末にこれを1枚埋めるだけ → ダウンロード
コンビニのネットプリントでも印刷できます。スマホでもタブレットでも、紙のノートでも、続けられる方法が正解です。無理に電子化しなくていい。
【配布ボタン】日次衛生管理記録表テンプレート
📊 日次衛生管理記録表(Googleスプレッドシート)
下のボタンを押すと、あなたのGoogleドライブに自分専用のコピーが作られます。
Googleアカウントさえあれば、AIも特別な知識も必要ありません。
※コピーはあなたのGoogleアカウントの中に作られ、他の人には見えません。
※原本は編集されませんので、安心して使ってください。
※印刷して手書きで使いたい方も、まずコピーを作って、シートを開いて「ファイル」→「印刷」から。
【コピペ用】衛生管理計画書テンプレート(菓子製造業・小規模事業者向け)
以下のブロックをまるごとコピーして、【 】の中を自店情報に書き換えてください。
▼ クリックで全文を開く(長いので折りたたみ)
# 衛生管理計画書テンプレート(菓子製造業・小規模事業者向け) > **使い方**: 【 】でくくった部分を、あなたのお店の情報に書き換えてください。それ以外はそのままでも大丈夫です。全部の項目に目を通し、実際にやっていない項目は削除、独自にやっている項目は追加してください。 > > **ベース**: 厚生労働省確認済み「菓子製造業における衛生管理計画作成の手引書」(平成31年2月8日確認)の例示様式に、実際の運用でわかった注意点(手袋・地下室・食事ルールなど)を加えたもの。 --- # 衛生管理計画書 作成日: 年 月 日 改正日: 年 月 日 製造所名: 【あなたのお店の名前】(【住所】) 当店における菓子製品の製造管理については、HACCPガイドラインに沿って菓子業界団体で示した「HACCPの考え方を取り入れた菓子製造業における衛生管理の手引書」(平成31年2月8日 厚生労働省確認)(以下「手引書」という)に基づき、以下の内容で衛生管理を行います。 ## Ⅰ. 製造する菓子の分類区分及び製品名 当店で製造する菓子製品は、手引書に定める菓子の分類区分の - 第1分類: 生地調整で加熱する菓子 - 第2分類: 生地調整後に加熱する菓子 - 第3分類: 加熱後手細工加工等が入る菓子 - 第4分類: 仕上げ工程(充填)後加熱する菓子 - 第5分類: 加熱加工しないあるいは低加熱加工の菓子 に属するものであり、分類ごとの具体的な菓子製品名は別紙-1のとおりです。 ## Ⅱ. 菓子製造・販売に係る衛生管理手順 当店は、次の者を食品衛生責任者とし、その指導の下に以下の衛生管理手順を励行します。 食品衛生責任者名: 【 】 ### 1. 設備、機械、器具及び従事者の衛生管理 #### (1) 設備の衛生管理 1. 作業場内は毎日作業終了後に必ず清掃するとともに、原材料・製品・仕掛品の保管場所は常に清潔に保つ。 2. 落下異物などを防ぐため、天井(清掃可能な範囲)・窓・照明器具・換気扇・排水溝は月1回、日を決めて清掃する。 3. トイレは専用の履物を用意し、適切に清掃及び消毒を行い常に清潔な状態を保つ。 4. **洗い場(シンク)の管理**: 洗い場は毎日作業終了後に洗浄する。排水口の生ゴミ受け(ストレーナー)は毎日ゴミを取り除いてブラシと洗剤で洗浄し、ぬめりを残さない。ぬめり・臭気が取れない場合は熱湯または消毒剤で殺菌する。 【任意の項目:地下室・別棟の倉庫など特殊な保管場所がある場合はここに追記する】 例: 「地下室は原材料(開封前のもの)・商品(梱包済みのもの)・梱包用資材の保管に使用する。除湿機および換気扇を稼働させ、月1回カビ発生を点検する。保管物は棚に置き、床への直置きは不可とする」 #### (2) 防鼠、防虫 1. ねずみ・ゴキブリ・ハエなどの侵入や発生状況を毎日目視確認する。 2. 発生が認められた時は速やかに駆除し、発生日時と場所、駆除の状況を記録するとともに、発生源・侵入経路を調査確認し再発防止策をとる。 #### (3) 機械・器具の衛生管理 1. 機械類は毎日作業終了後に、取り外しできる部品は取り外して、部品の破損・脱落を点検の上で洗浄消毒後、乾燥させる。使用中に部品の欠損等を発見した場合は直ちに作業を停止し、問題製品が販売されないよう対応する。 2. 作業台は、毎日作業終了後の清掃の際に【使用している消毒剤:例 アルコール製剤(パストリーゼ)】で消毒する。 3. サワリ・ボール・その他小物器具、番重等は必ず毎作業終了時に洗浄して清潔を保つ。 4. ザル・篩などは洗浄後、熱湯をかける、または消毒剤で消毒を行う。 #### (4) 冷蔵庫、冷凍庫の衛生管理 当店の設備: 冷蔵庫【 】台(管理温度10℃以下)/冷凍庫【 】台(管理温度−15℃以下) 1. 冷蔵庫の温度は必ず毎日始業時と終業時に確認する。 2. 温度が10℃以上を測定した場合は、詰め込み過ぎや故障など原因を究明して改善する。必要に応じてメーカーに点検修理を依頼する。 3. 10℃以上を測定した場合は、庫内温度と経過時間を考慮の上、責任者が庫内収容物の廃棄の是非を判断する。 4. 冷凍庫の温度は毎日始業時と終業時に確認し、−15℃超を測定した場合は原因を究明し改善する。廃棄の是非は責任者が判断する。 5. 停電などの際には庫内温度と収容物の異常の有無を確認し、廃棄の是非を責任者が判断する。 6. 庫内は常に整理整頓し、清潔に保つ。 #### (5) 従事者の衛生管理 1. 以下の際には必ず手洗いを行う。 - 作業場に入場した際/作業開始前 - 作業中に食材以外のものに触れた場合 - 食事・休憩後/用便後 - 生卵の殻を割った時など、その他必要と思われる時 2. 手洗いは流水・石鹸・ペーパータオル・アルコールを用意して行う(日本食品衛生協会の手順による)。 3. **使い捨て手袋の使用**: 衛生管理の基本は手洗いとし、手袋は必要な場合のみ使い捨てのものを使用する。手袋は1作業ごとに交換する。手袋を外したあとは直ちに手洗いを行う(手袋内は雑菌が繁殖しやすいため)。 4. 従事者は作業場内専用の作業着・帽子・履物を着用し、作業場内に付着物を持ち込まない。 5. 従事者は爪を短く切り、マニキュア・腕時計・指輪などは使用、装着しない。 6. 従事者の健康状態を毎朝必ず確認し、下痢・腹痛・発熱・嘔吐・感染が疑われる外傷等の症状がある場合は食品衛生責任者に報告し、製造作業を禁止して医師の診断を受けさせる。 7. 保健所から検便の指示があったときは、従事者に検便を受けさせる。 8. **日常の食事に関する注意(ノロウイルス等の持ち込み防止)**: ノロウイルス等は感染しても症状が出ないまま保菌・排出する場合があるため、従事者は日常の食事において以下を守る。 - 2枚貝(カキ等)の生食は控える(特に流行期の10月〜3月)。やむを得ず食べた場合は責任者に申告する。 - 生肉・加熱不十分な肉料理(レアハンバーグ、ユッケ、鶏刺し等)は食べない。 - 同居家族に嘔吐・下痢等の症状が出た場合は、出勤前に責任者に報告する。 当店の従事者は【 】名。健康状態の確認は口頭・目視に加え、日次記録表に確認結果を記録する。 #### (6) その他 1. 作業場内への部外者の立入を禁止する。やむを得ず立ち入る場合は専用履物・帽子・手洗いの上で認める。 2. 作業場内への私物の持込を禁止する。 3. **廃棄物容器(ゴミ箱)の管理**: 作業場内のゴミ箱はふた付きのものを使用し、汚液・汚臭が漏れないようにする。作業終了後は生ゴミ類を毎日作業場外へ持ち出し適切に処理し、排水に問題がないか確認する。ゴミ箱本体は定期的に洗浄し、汚れ・臭気を残さない。 4. 洗剤や薬品は専用容器に入れ品名を表示し、原材料と区分して保管する。使用後は必ず手洗いを行う。 ### 2. 原材料、商品及び資材の受入れにあたっての衛生管理 1. 原材料等は信頼のおける業者から仕入れ、受入れ実績を記録・保管する(納品書の綴じ込み保管でよい)。 2. 受入れの際には、納品書と現物の一致/品名・数量/消費・賞味期限/外装の汚れや破損・衛生状態を確認する。特に非加熱で使用する果物等は腐敗や傷の有無を念入りに確認する。疑義があれば責任者に報告し、対応結果を記録する。 3. **卵の取り扱い(サルモネラ対策)** — お店の実態に合わせて選択してください: - **殻付き卵を使う場合**: 仕入先において【殺菌方法:例 次亜塩素酸による洗浄】済みのものを仕入れる。受入れ時に容器包装の清潔状態・ひび割れの有無を検収する。保管は【保管方法:例 空調の効いた室内、または冷蔵庫】で行い、購入後【期間:例 1週間】以内に消費する(先入れ先出し)。 - **卵黄・卵白を単体で使用する場合**: 殺菌済みの冷凍卵黄・冷凍卵白を使用する。−15℃以下で冷凍保管し、使用の都度必要量を解凍して使用する。解凍後は速やかに使い切り、再凍結しない。 - 卵を単体で使用する製品はすべて加熱工程(3の9. 75℃1分間以上)を経て使用する。生食・非加熱で卵を使用する製品はない。 - 【もし生の卵を使う商品がある場合は、殻付き卵の保管温度を10℃以下にする等、より厳格な管理を追記する】 4. 受入れた原材料は受入れ日を表記し、先入れ先出しの原則を守る。 5. 受入れ後は適切な温度管理で定められた場所に保管し、原材料・商品と資材は区分して保管する。 6. 製造には【水源:例 水道水(直結)、または井戸水/貯水槽(この場合は水質検査年1回以上と記録保管が必要)】を使用する。 ### 3. 製品製造・保管の衛生管理 菓子の食中毒は、成形加工・手細工加工など従事者が製品に触れる工程での二次汚染が原因の事例がほとんどであることを認識し、1(5)の従事者衛生管理を励行するとともに、以下を遵守する。 1. 原材料を包材ごと製造区域に持ち込む場合は包材の衛生状態を確認し、調整・加工用の作業台の上には載せない。 2. 使用する器具類は作業前に清潔であることを確認して使用する。 3. 原材料の品質異常の有無・賞味期限を確認し、問題のないものを使用する。 4. 異物混入を防ぐため、篩通しの可能な原材料は必ず篩通しを行ってから使用する。 5. **アレルギー物質(特定原材料)の混入防止**: 器具は可能な限り専用のものを使用するか、共用する場合は十分に洗浄した上で使用する。特定原材料を使用しない製品から先に製造する。 6. 必ず作業前に手洗いを行う。作業中に製品以外のものに触れた場合も手洗いを行う。 7. 定められた配合・正しい作業手順を守り、異変やミスがあった場合は直ちに作業を取り止め、責任者に報告し判断を仰ぐ。 8. 加熱工程の仕上がり・冷却・出来上がり製品が自店の製造基準に適合するか官能検査等で確認し、フタ付容器等に入れ常温又は冷蔵で保管する。 9. **卵の加熱(重要管理)**: 殻付き卵や未殺菌卵黄を使用する場合は、75℃1分間以上の加熱を行う。カスタードクリーム等に卵黄を使用する場合は特に留意する。 10. 加熱殺菌したクリーム類は直ちに熱を冷まして冷蔵庫で保管し、速やかに使い切る。 11. 生卵の殻に触った場合は、次の作業の前に必ず手洗いを行う。 12. 完成品の表示に誤りがないか配合表と照合して確認する(アレルギー表示は特に留意)。 13. 消費・賞味期限は合理的根拠を持って定める。 14. 製品の出荷(運搬)に際しては適正な温度管理を行い、未包装・簡易包装製品は覆う等の措置をする。 15. 出荷後に品質上の問題が明らかになった場合は直ちに経営者に報告し、回収等の方針を速やかに決定するとともに、必要に応じ保健所等に連絡・報告する。 【金属探知機を使用している場合は、使用前後・所定の製品個数ごとにテストピースを通過させ正常動作を確認・記録する旨をここに追記する】 ### 4. 菓子の販売に係る衛生管理 【店舗販売がない事業者はこの項目をまるごと削除】 #### (1) 店舗、設備、器具の衛生管理 1. 店舗内・陳列ケース・トイレ等は毎日終業後に必ず清掃する。 2. 防鼠、防虫に努める。 3. 販売に使用する器具類は毎日使用後、洗浄・消毒・乾燥させ、決められた場所に保管する。 4. 冷蔵(冷凍)陳列ケース内は常に整理整頓し、毎日始業時と終業時に温度が適正か確認する。 当店の設備: 冷蔵ショーケース【 】台(【用途と管理温度:例 ケーキ用 3〜5℃/和菓子用 9℃以下】) #### (2) 販売従事者の衛生管理 1. 従事者の健康状態を毎朝確認し、下痢・発熱の症状がある場合は販売従事を禁止する。 2. 従事者は常に清潔な着衣を使用し、手などを清潔に保つ。 #### (3) 菓子販売時の衛生管理 1. 販売に際し、商品に問題がないか確認する。 2. 商品の表示内容及び消費・賞味期限を確認する。 3. 食品表示のない商品(バラ売り等)は、アレルギー物質に関する情報を消費者に的確に説明する。 4. 無包装商品の販売は直接手で触れず、トング・手袋等を使用する。 5. 要冷蔵品の販売に際しては持ち帰り時間を確認し、保冷剤の封入等適切な措置をとる。 ### 5. 衛生管理記録の作成・保存 当店は、日々の衛生管理の徹底とその見える化のため、「日次衛生管理記録」(別紙-2または別途スプレッドシート)を作成し、**1年間**(賞味期限が1年を超える製品がある場合はそれを考慮した期間)保存する。 記録は【記録方法:例 電子的方法(スマートフォン+スプレッドシート)、または紙に印刷して手書き】により作成・保存する。保健所等から求められた場合は、画面表示又は印刷により提示する。 ### 6. 衛生管理の振り返りによる改善点の把握と計画への反映 日々の記録の作成・月次の振り返りを通じ、衛生管理の改善点を把握するとともに本計画に反映させる(改正日を本書冒頭に追記する)。 --- ## 別紙-1 製法分類区分別菓子製品一覧表 【あなたのお店の商品を分類ごとに書き出してください。以下は書き方の例です。】 | 分類区分 | 商品名(例) | |---|---| | ①生地調整で加熱する菓子 | 例: 餡(自家炊き)、カスタードクリーム、水ようかん | | ②生地調整後に加熱する菓子 | 例: 焼き菓子、どら焼き生地、スポンジ、カステラ、蒸し菓子 | | ③加熱後手細工加工等が入る菓子 | 例: 大福・餅菓子、餡挟みのどら焼き、デコレーションケーキ | | ④仕上げ工程(充填)後加熱する菓子 | 例: プリン | | ⑤加熱加工しない/低加熱加工の菓子 | 例: 生クリーム仕上げ、フルーツカット | ※分類がわからない商品は、加熱の有無・タイミングで判断してください。判断に迷う場合は、お住まいの地域の食品衛生協会または保健所にご相談ください。 --- ## 記入時のポイント(作成する方へ) - **正直に書く**のがコツです。「本当はやっていない」項目を書いても意味がありません。実態と違う項目は削除するか、実態に合わせて書き換えてください。 - **お店独自の項目**(うちは地下室を使っている/うちは天然酵母を使っている等)は積極的に追加してください。手引書にない項目こそ、お店の個性であり衛生管理の質になります。 - **年に1回は見直し**、実態と合わなくなった箇所を更新して、冒頭の「改正日」を書き足してください。 - 迷ったら、**お住まいの地域の食品衛生協会または保健所**にご相談を。指導員や衛生監視員は、こういう相談を歓迎してくれます。
【コピペ用】月次振り返りテンプレート
# 月次振り返りテンプレート > **使い方**: 月末に3〜10分。記録表を見ながらこの用紙を埋めるだけ。手書きOK・スマホのメモアプリでもOK・AIに読ませてもOK。 --- # 【 】年 月 衛生管理の振り返り 記入日: 年 月 日 記入者: ## ① 温度で気になったこと 冷蔵庫の最高温度: ℃(基準: 10℃以下) 冷凍庫の最高温度: ℃(基準: −15℃以下) ショーケースの最高温度: ℃(基準: お店で設定した温度) 基準を超えた日があった? □ なかった □ あった(下に記入) → いつ・何度・原因・対応: ## ② ×(不備)が付いた項目 今月×が付いた日: 日 主な内容: 対応は妥当だった? □ 妥当 □ 見直したい(下に記入) ## ③ 今月気づいたこと・ヒヤリとしたこと (×が付かなかったけど気になったこと、たまたま防げたこと、なんでも) ## ④ 来月に向けた改善(1つでOK) (大きなことじゃなくていい。「換気扇の掃除日を第2月曜に固定する」レベルでOK) ## ⑤ 衛生管理計画書の更新はする? □ 変更なし □ 更新する(何を: ) → 更新する場合、計画書冒頭の「改正日」を書き足すのを忘れずに --- ## AIを使う場合のコピペ用プロンプト (生成AI=Claude・ChatGPT・Geminiなど、無料のもので使えます) ``` これは菓子製造業の1ヶ月分のHACCP衛生管理記録です。 ①温度の異常や気になる傾向、②×が付いた項目とその対応の妥当性、 ③来月に向けた改善提案、の3点で簡潔に要約してください。 判断に迷う点は「保健所・食品衛生協会に相談」と書いてください。 ``` このプロンプトに続けて、記録表の1ヶ月分をコピペで貼り付けて送るだけです。返ってきた要約を上の①〜④の欄に書き写せば、それで振り返り完了です。 --- ## 注意(AIに任せてはいけないこと) - **温度の実測・記録そのもの**は人間の仕事。AIは要約係です。 - **廃棄の是非・営業可否**など安全に関わる最終判断は責任者が行うこと。 - 迷ったら管轄の保健所または食品衛生協会に相談してください。指導員や衛生監視員はこういう相談を歓迎してくれます。
導入までの5ステップ
最後に、明日から動くための道順を1枚にまとめます。
- 記事1で「なぜHACCPが必要か」を理解する
- 本記事のテンプレ(計画書+記録表+振り返り)をたたき台にする
- 【 】の部分を自店の情報で書き換える(AI併用でも、コピペのみでも、印刷して手書きでもOK)
- 完成した計画書は、必ず食品衛生指導員か管轄の保健所に一度目を通してもらう
- 明日から記録を1日1分つける。続けているうちに、あなたの店独自の計画書に育っていきます
書類仕事は、”完璧に一度作る”ものではありません。運用しながら、実態に合わせて育てていくもの。今日ゼロだった方も、明日1歩踏み出すだけで、来月にはずっと楽になります。
免責事項
※本記事は2026年7月時点の情報です。菓子製造業の許可要件・衛生管理の運用は自治体により細部が異なる場合があります。テンプレートは新月堂の実物を汎用化したものであり、そのまま使えることを保証するものではありません。個別の判断や具体的な様式については、必ず管轄の保健所または地域の食品衛生協会にご相談ください。指導員や衛生監視員は、こういった相談を歓迎してくれます。

コメント