ケーキ屋が長く続く理由|潰れない経営の心構えと向いている人の資質

夕暮れの静かなケーキ店の店内とショーケース お菓子語り

富士宮で菓子屋を続けて、もう60年になります。

いろんなお店の浮き沈みを見てきて、しみじみ思うことがあります。——「お菓子屋さんは、意外と潰れにくい」。

もちろん、競争は激しい。それでも長く続く店には、はっきりと共通する“心構え”があります。今日は、それをお話しします。

お菓子屋が潰れにくい理由

まず、なぜ潰れにくいのか。お菓子は嗜好品ですが、需要そのものは景気に大きく左右されません。「ちょっとしたご褒美」「手土産」「お祝いの贈り物」——お菓子の出番は、暮らしのあちこちにあります。

それに、製菓はある程度の技術と設備が要る仕事。だから極端な安売り競争にもなりにくい。技術と信頼をコツコツ積み重ねていけば、長く続けていける商売なんです。

流行を追いすぎない

ただ、続けるうえで気をつけていることがあります。ひとつは、流行を追いすぎないこと。

新しいスイーツが出るたびに飛びつくお店があります。タピオカ、バスクチーズケーキ、マリトッツォ……。流行を取り入れるのは悪いことではありません。でも、それだけに頼るのは危うい。

ブームが去ったとき、店に何が残るか。——大切なのは「自分の店らしさ」を軸に持つこと。『あの店に行けば、あれがある』。そう思ってもらえる定番こそが、経営の土台になります。

季節商品の戦略的な活用

季節限定の商品は、店に鮮度とワクワクをもたらしてくれます。『そろそろ、あの時期だな』——そう楽しみに待ってくれるお客様の存在は、何よりありがたい。リピート来店のきっかけにもなります。

ただし、増やしすぎは禁物。仕込みの手間も、食材のロスもふくらみます。『少品種で、魅力的に』。現場が無理なく続けられる範囲を守ることが、長く愛される秘訣です。

仕入れ先との「win-win」の関係

見落とされがちですが、仕入れ先との関係も経営の安定に直結します。

値切ることばかり考えるのではなく、長く信頼し合える関係を築く。『あの店は誠実に取引してくれる』——そう思ってもらえれば、品薄のときに優先してもらえたり、新しい素材を真っ先に教えてもらえたりする。これは、お金では買えない財産です。

数字を疎かにしない——「売れたはず」では、もう続かない

もうひとつ、これは時代の変化として、強くお伝えしておきたいことがあります。

正直に言えば——お菓子がよく売れていた頃のわたしは、売上や仕入れ、経費を細かく確かめることをしていませんでした。勢いと感覚で、なんとか店が回っていたのです。

でも、今の時代はそうはいきません。数字を疎かにしてはいけない。

「去年、あのお菓子はかなり売れたはず……」——そんな記憶頼みのどんぶり勘定ではなく、しっかりとデータにして、数字で把握する。それが食材や商品のロスを防ぎ、いまの経営状態を正しくつかむ何よりのポイントです。

地味な作業ですが、決して怠らないでください。数字と向き合うことが、これからの時代を続けていくための、いちばん確かな足場になります。

経営の根本は「誠実さ」

技術も、商品力も、もちろん大事。でも、長く続く店に共通しているのは、結局のところ「誠実さ」だと感じます。

お客様に、取引先に、スタッフに——真摯に向き合えているか。うまい話に飛びつかない。無理な背伸びをしない。約束を守る。そんな当たり前を積み重ねることが、気づけば『ダメにならない店』をつくっていくのだと思います。

この仕事に向いている人——5つの資質

では、こういう店を続けていけるのは、どんな人か。長年やってきて、向いている人にはやはり共通点があると感じます。

① お菓子を作るのが好きなこと。好きなことをやっている時間は苦にならず、上達も早い。毎日が楽しいとはいきませんが、「好き」が根っこにあれば続けられます。

② 人に喜んでもらうのが嬉しい人。テイクアウトのケーキ屋はリアルタイムの反応が少なく、孤独との戦いでもあります。それでも、リピートしてくださるお客様の言葉や笑顔が、何よりのご褒美になります。

③ 時間の管理ができる人。個人事業主は自分が動かなければ何も始まりません。二日酔いでも少し熱があっても、開店時間は変わらない。時間を守ることが、お客様への信頼につながります。

④ 結構お気楽な人。収入は月ごとに変わり、自信のある商品が売れないこともあります。全てを重く受け止めていては身が持ちません。「ま、なんとかなるか」と前向きに流せる楽観性も、長く続ける秘訣です。

⑤ 飽きずにコツコツできる人。毎日同じ作業の繰り返しが多い仕事です。瞬発力より持続力。「商い」は「飽きない」から来るとも言われます。地道に続けられる人が、長い目で見て強い。

それでも、続ける理由

正直に言えば、楽しさ半分・苦しさ半分です。それでも——「美味しかったから、また友人へのお土産に来ました」というお客様の一言や、おばあちゃんがお孫さんにケーキを手渡すときの笑顔。そういう場面が、明日も店を開けるエネルギーになります。経営の心構えの根っこにあるのは、結局この「誰かの特別な一日に関われる喜び」なのだと思います。

経営の形は人それぞれですが、ぜひ自分なりの「軸」を持って続けていただければと思います。


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静岡県富士宮市青木で60年以上続く、地元に愛される和洋菓子の老舗です。

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営業時間:火〜日 8:00〜19:30(月曜定休)/住所:静岡県富士宮市青木325-12

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