コンビニのレジ横に、つやつやのスイーツが並ぶ。正直に言えば——あれはもう、立派な競争相手です。
ケーキ屋を営む者として、その実力は認めます。でも、長くやってきたからこそ見える“弱点”もある。そして、街の小さなケーキ屋にしか出せない強みも。今日は、コンビニスイーツの正体と、それでも個人店が選ばれる理由を、正直にお話しします。
——その前に、いまの現実から。正直なところ、今は本当に厳しい時代です。
ある調査会社(帝国データバンク)の調べでは、洋菓子店の倒産は2025年度に65件と、2年連続で過去最多を更新しました。小麦粉もバターも生クリームもカカオも、あらゆる材料が記録的に値上がりし、包装や光熱費まで上がっている。それなのに、お客様が離れるのを恐れて、街のケーキ屋はなかなか値上げに踏み切れない。コンビニや大手チェーンとの板挟みで利益が出ない——そんなお店が、決して少なくないのです。
それでも、私はこの商売に活路はあると思っています。だからこそ、まずは相手をよく知ることから始めましょう。
コンビニスイーツの影響力
コンビニスイーツは、年々クオリティが上がり、パッケージの研究も進んでいます。もはや“脅威”と言うのが正直なところ。その裏には、緻密な戦略があります。
まず巧みなのが「ついで買い」の心理です。お弁当やコーヒーを買うついでに、つい甘いものを手に取る——食後に甘いものが欲しくなる自然な欲求と、店内の導線設計が、見事に組み合わさっています。
次に、テレビの企画枠を使った話題づくり。ひとつのスイーツが長い尺で特集されれば、多くの人が「一度食べてみたい」と思う。コンビニは一定期間で売り切り、次々と新作を投入する——リピートよりも話題性で集客する戦略です。SNSのプレゼント企画で、流行に敏感な層を効率よく動かすのも上手い。
最近は、その上をいく動きも出てきました。「高級感」を前面に出した、一段上のスイーツです。物価高で財布の紐は固いはずなのに、スイーツには「ちょっといいご褒美を」とお金をかける——いわゆる“メリハリ消費”。許容価格も上がり、今や250〜300円のスイーツが当たり前になりつつあります。彼らは、その心理を的確に捉えているのです。
コンビニスイーツの弱点
とはいえ、これだけ強いコンビニスイーツにも、弱点はあります。
ひとつは、流通の問題。輸送に耐える容器の工夫はされていますが、ケーキは本来、壊れやすいもの。どうしても廃棄ロスが出ます。そのロス分は、あらかじめ価格に乗っているのです。
もうひとつは、鮮度です。とくに生クリームを使ったものは、本来その日限りの繊細さ。日持ちさせる工夫も、結局は価格に上乗せされます。——それに、意外と知られていませんが、法令上「生クリーム」と表示できるのは乳脂肪だけを原料にしたものに限られます。多くのコンビニスイーツは「乳等を主原料とする食品」、つまりホイップクリームを使っている。あの満足感を出す技術は素直にすごいと思いますが、本物の生クリームとは、やはり別物です。
そして、話題性で売る戦略は、常に新作を投入し続けなければなりません。でも、それにもいつか限界が来るはず。そのとき大手がどう動いてくるか——個人店としては、気が抜けません。
ケーキ屋さんの商機
押されているように見えて、街のケーキ屋には、まだ十分に戦える場所があります。
まずは、地産地消。地元の牛乳、果物、野菜——個性を出せる素材は、必ず周りにあります。地元の素材で作ったお菓子は、それだけでお客様の心に響く魅力になります。旬の素材を短い期間だけ出す季節限定も有効。「今しか食べられない」は、話題と来店動機を生みます。SNSの地道な発信も欠かせません。一度きりのお客様でも、その数%がリピーターになれば、顧客は着実に増えていきます。
そして、いちばん大切なのが適正価格です。大手はロスを見越して価格を決めている。それを個人店が真似る必要はありません。材料に対して誠実な価格をつけ、作り手とお客様が、ともに幸せになれる関係を築いていく。——値上げが怖い時代だからこそ、ここを履き違えないことが大事だと思います。
まとめ
商売は、長く続けることが将来の儲けにつながります。目の前の競争だけに目を奪われず、10年、20年先を見据えた戦略を持ちましょう。
誠心誠意、お客様に向き合うこと。——それが、街のケーキ屋が生き残り、儲け続けるための、たった一つの秘訣だと思っています。
📍 新月堂はこちら
静岡県富士宮市青木で60年以上続く、地元に愛される和洋菓子の老舗です。
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営業時間:火〜日 8:00〜19:30(月曜定休)/住所:静岡県富士宮市青木325-12


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